折半屋根を 分解するために 水切り金物を 取らねばならぬのだが 、水切り金物を 取るためには その上にかぶさっているモルタル壁を 取らねばならぬ ・・・
折半屋根分解のために モルタル壁を 切る ・・・

この日の 初期状態 ・・・

折半屋根上の モルタル壁付近 ・・・
壁のクラックから 雨の日 、漏水するので シートを 掛けてある 。

サッシの下の部分のモルタル壁

サッシの右側のモルタル壁

取り外してある窓に映る南の空 ・・・
切る部分に 印 ( しるし ・ すみ ) を つけて 切る ・・・

鉛筆で 切る所に 線を 書く ・・・

モルタルを切る時の 姿 ・・・ レイン・スーツ 、保護メガネ 、防塵マスク。
レイン・スーツは 動きづらくなるが 、この作業終了後、すぐ脱げば 、後の作業の時 、粉っぽく汚れたままでいなくていいので 、この格好をするようになった 。

線に そって 切ってみた ・・・
モルタルの 裏が 驚くほど 腐っていた ・・・

切ったモルタルを 倒してみると・・・
全景 ・・・

左側 ( 西側 ) から 見ていく ・・・
モルタル 、黒い防水紙 、4分(ぶ)板 という構成のはずだが 、板が 腐って ほとんど原型がない 。

下から 水切り金物に溜まった水を モルタルが 吸い上げたのと 、壁のクラックからの漏水 、そんな湿気が モルタルの裏に溜まり 、
板が 防水紙と発泡性のポリシートに囲まれていたため 、乾くことができず 、菌類の繁殖に適した環境になった ・・・ のではないか?…

拡大 ・・・

サッシ下部分は 、中央に行くほど 、防水紙が しっかり残っている 。

サッシ下の 中央部分 。防水紙が 普通に 残っている 。

サッシの右側 、東側部分 ・・・

既に 解体してあった部分との境あたり ・・・

既に 解体してあった 東側部分 。
下から一段目の板部分は 既に撤去 。
西側の部分よりは 腐っていない 。
下から2段目の板には ビスも効く 。

東側部分の 拡大 ・・・
これでは 板の腐れ具合の違いが よくわからないので 、次に 取り外した板を サッシと外壁の下に 並べてみる ・・・

これは 既に 解体してあったサッシの下の部分の板 。
部分的な腐り方が 、サッシの 排水穴に対応しているように見える 。
次に 拡大 ・・・

サッシの 排水穴は 3つ 。左 ( 西 ) 、中、右 ( 東 ) 。
これは 外から見て左 ( 西 ) の穴と その下の 外壁の下地板との 腐れの関係 。
板の左側の 腐って無くなってる部分は サッシの端 ( 西 ) にあたる 。

サッシの 真ん中の排水穴と その下の外壁下地板の 腐敗関係 ・・・

サッシの右 ( 東 ) の穴と 外壁下地板の 腐敗関係 ・・・
特に ここは わかりやすいように思えた 。

サッシの 右端 ( 東 )と その付近の 外壁下地板の 腐敗関係 ・・・
腐敗の度合いから 雨水の量が わかるように思った 。
窓 、開口部の両脇は かなり水が 集まるようだ 。
これは 開口部の上の外壁から流れて来る雨水が 開口部、窓枠の上部 、天端で 両脇に分けられて 流れて来るからではないだろうか? ・・・

サッシの 右 ( 東 ) の 外壁下地板 。
サッシの端付近は 腐っているが 、外壁の方は 水切り金物から 1段目で あっても 、それほど 腐っておらず 、ビスや 釘が 効く。

サッシの 左 ( 西 )の 外壁下地板 。
1段目は ボロボロで 板の形状は とどめていなかった 。
こう見てくると 、外壁下地の板が 腐る条件のようなものが 幾つかあるようだ 。
下地板の施工状態が 、防水紙と 発泡ポリシートに 挟まれていても 、そこに 水が 入らなければ 、腐らない 。
これは 東の方の外壁が あまり 腐ってない事から そう思う 。
そして 、下から 水を モルタルが 、毛細管現象的に 吸い上げたり 、壁の 亀裂 ( クラック )から 雨水が モルタル内に 入ると 、板が 両側から 防水性のシート等で 覆われていた場合は 、水が なかなか抜けず 、キノコの菌が 繁殖できる湿度と 温度が 長時間続く ・・・ のでは ないだろうか?
つまり 、一旦 、浸水を許してしまうと 従来の 部材に密着させて 防水シート等を 施工する高気密・高断熱な 施工の 木造構造は 腐れやすい 。
なので 、木構造と 気密シートの 間に わずかでも 空間を 空けるような 施工を し 、もし 、構造部材が 濡れても 、キノコが 繁殖し出す 、腐り出す前に 乾きさえすれば 、構造部材は 腐らず に長く使えるのではないだろうか?

サッシの 左 ( 西 )の 外壁付近には 水切り金物の接合部もあり 、水が 集まって来ていたかも知れない ・・・
この部分の サッシの 両脇の 外壁下地の腐り方を 見て そう思ったのだが 、更に 今まで 見てきた 西の方の もう一つの サッシの 脇の外壁の下地の 腐れ方を 見ると 、
そちらの方は 水切り金物の 接合部などないから 、
外壁の クラックからの 雨水の浸入によるものだろう ・・・ 。
あとは 外壁が 南面していても 西の方の壁と 東の方の壁では 、雨の当たる量が 違うのではないだろうか?
基本的には ここも 他の日本列島の地域と同じように 、 西から 天気が 変わるから 、1年を 通じて 総じて言うと 、西から 雨が 吹き付けることが 多いので 、南面する外壁の 西側の壁の下地板の方が 腐れが 激しいのでは ないか? ・・・
状況証拠から そう 推察できるような気がする 。
このような事を 鑑みると 、屋根や 外壁の 下地構造には 通気層を 作る 、特に 断熱材と 構造材の間に 通気層を 作ることが 建築物を 長く使うには 非常に重要な事だと 思われる 。
その通気層は 必要十分最低限の 厚み 、スペース 、、実際の材料を 考えれば 、4分板分 、12ミリくらいのスペースが いいと 思える 。
同じ外壁の下地でも 、腐朽の度合いが 違うのは なんでだろうか ? ・・・
今やってる工程では 、折半屋根を 分解・解体するために それを 押さえている 水切り金物や モルタルが 取れれば 、それでいいのだが 、
下地板の腐れ方が あまりにも 激しいので 注目し 、原因を 考えたりしてしまう ・・・
木材の腐朽の仕方の違いが 、外壁の構成要素 、部材 、設計や、その 施工の違いによって かなり 変わり 、
木材は 、濡れたとしても ある時間内に 乾けば 、実用的なレベルで 見ると 「腐らない」と言ってもいいのではないか? という思いを持った 。
これは 、築約50年の この木造住宅の土台部分の腐朽の仕方の違いを 見ていても 思ったことで 、
土台であっても ある程度の 乾燥状態で 通気性を 確保できるような 構造にしてやれば 、必ずしも 薬剤を塗布しなくても 腐らないのではないだろうか?
現に この住宅の 南端と北端の土台には 全くと言っていいほど腐っていない箇所がある 。
その北端の土台は 浴室のあった所でさえあるのである 。
状況から 推察して 、通気と 密接に関係している 。
基礎の外周の上に置かれた土台は 概して腐ったり ボケたりしていないものが 多い 。
この家は 南北4間 、東西7間半であるが 、幸か不幸か 、この建物の施工は 実直な仕事とは言えない、つまり手抜き工事と言わざるを得ない部分が 結構あり 、基礎の天端は レベルなど取って整形しておらず 、板を挟んで 土台のレベルを おおざっぱに取ってある 。
更に 床の下地の 根太のレベルを それでは 出せなかったと見えて 、土台や 大引きの側面に 貫を打ち付けて 、その天端に 根太を 打ってあると いう有様である 。
従って 、部分的には 土台と基礎の間に 指が入るほど空いている 。
その部分の通気性は良く 、それが 外周部分であると 、土台の下側などは 、他の3 面は 防腐剤が塗ってあるのに 、 防腐剤が塗布されていないのであるが 、全く腐っていないのだ 。
それとは 対照的に 住宅の 中心付近の 土台の腐れは ひどい 。
こげ茶色のクレオソートと思われる薬剤が塗ってあり 、50 年経っても 多少のにおいが残っていて 、表面は 一見 何ごとも起こっておらず 、断面が 正方形の角材に見えるのだが 、薬剤が 浸み込んでいないと思われる 表面から数ミリの所から 、ほぼ空洞になっているといっていい程 完全に 菌類に 食われ 、お菓子のウェファースのような状態になっているものが ある 。
この中心付近の 土台の腐れ方も 、ある傾向があって 、外周から離れて建物中央付近に行くにつれ 、腐れ方が ひどくなっていて 、床下の 湿度の分布を 如実に物語っているかのようである 。
これは 1階の 床下の話 。50ミリ・グラスウール断熱材が ポリシート無しで フローリング下に 、4分板のスノコ状の受けの上に施工された部分の話である 。
ところが 、これが 、断熱材が一切無い床下だと 、建物の中心付近でも 、土台は ほとんど 腐ったりボケたりしておらず 、当面の使用には 取り替える必要を 感じない状態だ 。
もう一つの 木材の腐朽に関する考察の参考となるのは 雨漏りだ 。
1階屋根と 2階外壁の取り合い部分の水切りの勾配が 建物側に 傾いていたり 、モルタル壁にクラックが あることから 、その外壁方向に 雨が吹き付けるように降る時は 、1階に雨漏りが はっきりと 淡々と 雨の激しさに応じて落ちて来ていた 。
この雨漏りの水は 桁や梁を伝って 、落ちてくるのだが 、その部材にはっきりと 水跡を 残す 。
雨漏りを 観察していると かなりの水が 長年 同じ経路で 流れていただろうと 思われるのだが 、その部分に わかりやすく水跡が付いている割には 部材が ボケたり 、腐ったりしていないのだ 。
その 雨漏りの経路には ウール状の断熱材は無く、構造部材が 組まれているだけで 濡れても 乾いていける 通気性が 確保されているようなスペースが ある 。
南から吹き付ける雨の時は 毎回びっしょり濡れたはずの部材が 腐っていないのは 濡れても 割とすぐ 乾くからだろうな ・・・と 思わざるを得ない 。
このような状況を 目(ま)の当たりにしてみると 、断熱材を 入れても 木材の周りに 、もし 濡れても 乾くことのできる 通気スペースを 設けてやれば 、防腐剤等の 化学物質に 頼らなくても 50年は 持つだろうと 思える 。
話が 長くなり過ぎだが 、既存住宅の 分解・解体を 丁寧にやって 観察すると 、いろいろと 建材メーカーや 施工業者 、建築家の 言う事とは 違った 事実を 知ることができる 醍醐味が あると 言える 。
蛇足と言えば 、蛇足だが 、蛇に足を付けると 竜になる場合もあるので 申し添えておく ・・・
さてさて 翻( ひるがえ )って 、この現場の 解体の話に 戻るが 、具体的な状況から 観察できる興味深い部分は 、サッシ下の 腐朽の仕方である 。
サッシ両脇の モルタル壁の下地の 激しい腐れ方に比べると 、サッシの下の いかにも 水の 溜まりそうな箇所が それほど腐れておらず 、部分的には ボケてさえいない 。
この違いは どうして生まれるか?は 、この状況を 見ると 考えざるを得ないが 、推察するのは 割と 簡単である 。
サッシ下部分には 4分板の裏側に 発泡性のポリシートが 施工されておらず 、グラスウールむき出し 、そのグラス・ウールの室内側は 厚み5.5ミリの内装用のベニヤ板だったので 、
サッシ両脇の壁の下地同様 、もしくは もっと 水量的には 濡れたかもしれないが 、板の室内側の面から 乾いていったと 思われる 。
サッシと 建物との取り合いも 釘打ちだけで 留めてあり 、防水テープなどの 施工もないため 、サッシ周りの隙間からも 通気して 乾くことが できたのでは ないだろうか?・・・
とにかく 下地の4分板が 防水紙と 発泡ポリシートに サンドウィッチされずに 済んだから 、木材にとっての湿度地獄 、つまり 菌類の繁殖に最適な環境にならず 、それほど 腐らなかったのだろう 。
これで 、その下の 水切り金物の勾配が 適切に 建物外側に勾配していたら 、もっと 健全な状態で 、施工 50 年目の 節目の年を 迎えられただろうと 思う 。
色々 こんなふうに 考えてくると 、腐った ぼろぼろの壁の下地が 身を挺して いろいろ 教えてくれているといっても 過言ではない 。
何ごとからも 学ぶことはできるものである ・・・ と言って この 長話を 締め括れば いいだろうか ? ・・・
解体部分の 黒い防水紙を よけてみる ・・・

防水紙の下にあるはずの 4分板は パフパフに 腐っていて 、崩落した 。

サッシの中央付近の板は 、ピンピンしている 。ほぼ 腐っていない 。

サッシ下の両脇が 腐っているのは 、サッシの両側に上から流れて来る水が 集まって来るからだろう 。

サッシ下、中央付近 拡大 。

サッシの 右側 ( 東 ) 。こちらの 下地板も パフパフに 腐っていて 崩落 ・・・
外壁の 下地板を はずしてみる ・・・

下地板を はずす‥・ と言っても 、サッシの下以外は 崩落してないのだが ・・・

はずした サッシ下の下地板 。中央付近 。
水切り金物を はずしてみる ・・・

はずした水切り金物 、全景 。
水切り金物の 水下の方に 下地として 胴縁が 打ち付けてある 。

水切り金物の 、折半屋根のボルトが 当たる干渉部分に ボルトが 突き出させるための 大きな穴が ・・・
壁を 伝って 流れて来る水を 建物の外側へ 誘導するはずの 水切り金物が 建物側へ 傾いて 勾配が付いたうえ 、こんな 穴が 開いていたら 、建物内部へ 水を 誘導していたことになる 。
板金屋なら 水切り金物の意味や 傾きの付け方を 知らないはずが ないんだがな ・・・
ボルトの 頭を 切ったり 、金物の立ち上がりの長さを 修正するのが めんどくさかった ・・・ と 想像する ・・・

水切り金物の 右端 ( 東 ) 。

再び 、右端から 全景 。

雨仕舞のため 、再び 水切り金物を 取り付けた ・・・
ここは しばらく後で やるので ・・・

とりあえず 、先ず 、やるのは こっち だから ・・・
この日の まとめ ・・・
作業開始も 遅くなり 、あまり 進捗せず ・・・
とにかく 外壁下地の 腐り方には 驚いた ・・・ と 同時に 腐る、腐らないの差が 、ちょっとした施工の工夫 、設計の工夫で 出るように思えた 。
50年かけて 実証試験をしたものを 観察したような感じである 。
同じ構造になっていても 方角や 、それに伴う 雨水の量の違い 、水仕舞いの形状による水の道筋の違いなど 、建物の局地的な「気候」が できているように思う 。

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